九州工業大学大学院

情報工学研究院 物理情報工学研究系

電子材料研究室

研究内容
  1. 研究室の特長
  2. 試料作製方法
  3. 試料評価方法
  4. β-FeSi2の研究
  5. Ru2Si3の研究
  6. Bi2Se3の研究
  7. AlNの研究
研究室の特長

本研究室は試料の作製から評価まで一貫した研究体制をとっており,分子線エピタキシー法およびRFマグネトロンスパッタリング法による試料作製と電気的・光学的な評価を行っています.

試料作製方法

分子線エピタキシー法(Molecular beam epitaxy)


Knudsen cell (Kセル)中の原料を加熱することによって分子線を発生させ,基板上に蒸着させる試料作製方法です.融点の高いSi原料は,熱電子を衝突させることによって分子線を発生させます.チャンバー内の不純物を超高真空(~10-10 Torr)まで排除した清浄環境下で成膜を行うことから,残留不純物の少ない高純度な膜を作製することが可能です.また,電子線回折を利用したRHEED像の観察により成膜中のその場観察が可能です.本研究室では,適切な条件下でSi基板上にFeとSiを同時蒸着させることにより,β-FeSi2エピタキシャル膜を作製する技術を確立しています.

試料作製方法の画像

RFマグネトロンスパッタリング法(Radio flequency magnetron spputering)


チャンバー内にArガスを導入し,RF電源によってプラズマ化させます.プラズマ化したAr+イオンが負極となるターゲットに衝突することによって,ターゲットの原子がエネルギーを受けて飛び出します(スパッタ現象).マグネトロンスパッタリングでは,ターゲットの裏に磁石を設置することでプラズマ密度を高めて成膜レートを上げています.一般的に,原料を選ばず大面積な薄膜作製が可能であることから,産業用途に適した成膜方法として広く用いられています.本研究室では,Siターゲット上にFeチップを着磁させるユニークな方法で,残留不純物を1×1016 cm-3まで抑えた高純度なβ-FeSi2多結晶薄膜の作製に成功しています.これは現時点で β-FeSi2多結晶薄膜における世界最高純度の試料であり,応用へ向けた物性研究を進めています.

試料作製方法の画像
試料評価方法

ラマン分光法


ラマン分光法とは,ラマン散乱光を用いて物質の評価を行う分光法です.入射光を物質に照射すると,光が物質と相互作用することで入射光と異なる波長を持つラマン散乱光と呼ばれる光が放出されます.その波長差は,物質が持つ分子振動のエネルギーに相当するため,分子構造固有の波長を持ったラマン散乱光が得られます.それにより,ラマン散乱光を用いて配向・結晶性などの様々な物性を調べることができます. ピーク位置からは化学結合の情報,スペクトル全体の波形から分子構造の情報や結晶構造の違い,ピーク半値幅からは結晶性の違い,ピーク位置のシフトから歪みなどの様々な情報が得ることができます. ラマン分光装置は光源,分光器,検出器から構成されます.得られる信号は横軸を波長(波数),縦軸を強度とするラマンスペクトルです.

試料作製方法の画像
β-FeSi2の研究

参考文献:Y.Terai et al., J. Appl. Phys. 135, 205302 (2024)

Ru2Si3の研究

参考文献:K.Setojima et al., Defect and Diffusion Forum 386, 33 (2018)

Bi2Se3の研究

参考文献:T.Kondo et al., Jpn. J. Appl. Phys. 62, SD1016 (2023)

AlNの研究

参考文献:Y.Terai et al., Jpn. J. Appl. Phys. 62, SA1003 (2023)